「ムーラン・ルージュ」感想

ミュージカル「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」感想

私が以前、卒業コンサートを見に行った元モーニング娘。加賀楓さんが出演されるということで「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」を観劇。

ムーラン・ルージュの広告やポスター等で飾られた帝国劇場前を加賀楓さんのFSKと共に撮影

帝国劇場前にて #FSKとおでかけ



加賀楓さんへの思い等はこちら…

ebimiso-champon.hateblo.jp

映画はこちら

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B019VSLFQY/ref=atv_dp_share_cu_r

 

ムーラン・ルージュについてあれこれ

フランスのパリ・モンマルトルにある赤い風車(フランス語でムーラン・ルージュというらしい)が目印のナイトクラブ「ムーラン・ルージュ」を舞台に売れない作曲家と売れっ子ダンサー(高級娼婦)の恋愛を描いたミュージカル映画およびそのミュージカル作品である。

原作は映画で、1930年頃をベースにしたフィクションだが、「ムーラン・ルージュ」というナイトクラブ自体は実在しており、現在も観光名所にもなっている様子。日本の歌舞伎座のような感じだろうか。

実在するナイトクラブが舞台ということでその時代に実際に「ムーラン・ルージュ」のためにポスターを描くなど支援を行っていた画家のトゥールーズロートレックも重要な人物の1人として登場する。

ちょうど昨年頃、パリで生活した日本人画家の作品を集めた展示を見に行っていて、「ムーラン・ルージュ」が赤い風車という意味のナイトクラブだと知ったとき、似たような絵を見たような?と思ったらそれはユトリロの描いた「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」だった。こちらもパリ・モンマルトルにあり、トゥールーズロートレックも描いていた場所。現在はレストランになっているらしい。

映画版のミュージカルシーンで使われた曲は往年のヒットソングたちで、私でも知っている曲もいくつか。洋楽の知識があまりないのだがとにかく曲数が多くアレンジたっぷりに聞かせているというのは理解した。

ミュージカル化にあたり、曲数がさらに増え、マッシュアップ等のアレンジも増え、楽曲の権利関係の調整が大変だった様子。楽曲だけでなく豪奢な舞台セットにオーダーメイドの衣装等、細部にまでこだわり一切妥協せずに制作していることがチケットの価格にも反映されていた。

S席で2万円近い金額はなかなか強気だが実際見に行くと納得の金額でもある。

ムーラン・ルージュのセット。開演前や休憩中などは撮影が可能。

ムーラン・ルージュのセット

観劇日のキャスト一覧

観劇日のキャスト一覧




加賀楓さんについて…

今回のミュージカルのお目当てでもあった加賀楓さんが演じられるのはムーラン・ルージュのダンサー・ニニ。

タンゴダンサーのサンティアゴとのタンゴのシーンは圧巻。映画版では黒髪であり、激しいタンゴシーンはさながら黒鳥の雰囲気。皮肉屋で場をかき乱す様子はムーミンに出てくるリトルミイを彷彿とさせる。そういえば髪型もお団子で似ている。

モーニング娘。時代も芯はあるが剛と柔が共存するしなやかなダンスというイメージを持っていたが、今回のミュージカルにあわせてかなり身体を鍛えたのではないかと感じる。以前から加賀楓さんの背中の凛とした雰囲気が好きだったのだが、背中の開いた衣装から見える背筋が卒業コンサートで見たときよりもかなり鍛えられた感があった。

ダンスは柔軟性を求められるような振り付けが多く、やり方を間違えると腰を痛めかねないので体幹や背筋をしっかりトレーニングされたのだと思う。脚を振り上げるフレンチカンカンのダンスもカワイイ。

他のプリンシパルキャストたちよりかなり年齢が若いので、どうしても台詞回しというか声そのものに若い印象が強いが、初日から一ヶ月程経ってからの観劇だったのでかなりこなれた様子。

まぁまさかキスシーンやあそこまで男性と密着するシーンがたくさんあるとは思わなかったが(笑)どれもしっかり自分に落とし込んでいて流石といった感じ。卒業後はダンサーとしての彼女を見ることになると思っていたので演技まで見れるとは嬉しい限り。

 

ミュージカルでのニニの役どころやキャラクターが掘り下げられたり変更されたりしていて、その掘り下げられた部分に"加賀楓さんらしさ"を感じて愛しくなってしまった。楓ちゃんのこれまでの活動や人となりを多少知っているファンからすると、サティーンとのシーンはとても説得力のあるものだった。

前から5~6列目ほどの位置で見れたので卒業コンサート時よりもかなり近くで楓ちゃんの演技を見ることができて満足。

情報解禁した頃ツイッターで「まじめっちゃ頑張る」と言っていたけど本当に頑張ったんだろうなあと。ダンスがまったく他のキャストと見劣りしなくて、これから本格的にダンサーとして活躍していくんだろうなと楽しみになった。

 

映画版とミュージカル版の違いなど
  • テーマの扱い方

そもそもの映画版のストーリーは、病に冒されるヒロインと夢を追う若き青年の恋愛、そしてそこに立ちはだかる貴族の男性、障害があるほど燃え上がる恋、そしてヒロインの死というコテコテ王道(擦られすぎて一周回って新鮮かもしれない)悲しいラブストーリー。

正直ストーリー自体はあまり好みではない。

映画では「人がこの世で知る最高の幸せ、それは誰かを愛し、その人から愛されること」が何度となく出てきて、かなり恋愛至上主義的な価値観でもって愛を語る。主人公クリスチャンやトゥールーズが主張する「ボヘミアン魂」は「真実・美・自由・愛」のために正直に生きることをモットーとしているので、それをかなり恋愛に寄せて主張しているというか。

ミュージカルではメインテーマとして何度となく歌われるのはユーミンこと松任谷由実さんが訳詞を手掛けた「Your Song」。この曲では「なんて素晴らしい君のいる世界」と歌う。愛という言葉を使わずに愛を表現するというか、より広く愛を定義して多くの人にハマりやすい言葉に換えた素晴らしい訳詞だと感じた。また加賀楓さんのファンとしてもこのミュージカルを見て「なんて素晴らしい加賀楓さんのいる世界」と感じたので、客席にいる人の多くがミュージカルファンまたは役者のファンであろうと考えるとメタ的な取り方もできる詞であると感じる。(そこまで意図しているかどうかは分からないが)

まずは、加賀楓さんが演じたニニ。映画でのニニはサティーンをライバル視し、虎視眈々とトップの座を狙う存在。皮肉屋で冷笑と嘲笑を好み、天邪鬼で場をかき乱し、クリスチャンとサティーンの悲劇の原因をつくる。率直に言って結構嫌な奴であり前述したようにムーミンに出てくるリトルミイのような雰囲気。

ミュージカル版でのニニはサティーンをライバル視し、トップの座を狙う存在という設定は維持しつつも、サティーンやジドラー、ムーラン・ルージュの仲間との疑似家族的関係を感じさせる役割にもなっていた。

体調の良くないサティーンにライバルとしていつでも蹴落とすつもりはあると正々堂々表明しながらも「体を大切にして」と気遣い、「私達はシスターでしょう」と手を握ってポジティブな関係性を言葉にするところに驚いた。

シスターフッドや疑似家族(あるいはchosenfamily?)の要素を入れたのは映画公開時から現代に合わせるためか。

ムーラン・ルージュの興行主であるジドラーもミュージカル版ではかなりコミカルでお茶目なキャラクターになっていた。映画のジドラーはギリギリまでサティーンに結核の事実を伝えない。体調を心配してはいるがムーラン・ルージュの看板ダンサーとして活躍してもらうことを優先していた。ミュージカルでは早々にサティーンへ病名を告げ、ニニを代役に立てて入院させようとしていた。

映画ではあまりジドラーやニニからサティーンに対する愛情を多く感じなかったのでサティーンが「ムーラン・ルージュは家族」「家族を守らないと」という言葉にあまり説得力がなかったが、ミュージカル版ではニニやジドラーとの関係性が見直されることで説得力が増した。

ニニに関してはサンティアゴとのロマンスもありクリスチャンとサティーンのシーンでも舞台の脇で二人がなにかコミュニケーションを取っていたりするのがカワイイ…

実在する画家トゥールーズロートレックwikiなどに掲載されている実際の写真を確認すると映画版もミュージカル版もかなり見た目は本人に寄せた仕上がり。

ミュージカル版ではサティーンと幼馴染のような設定になっており、正直サティーンを理解しているのはクリスチャンよりもトゥールーズでは…という気持ちにもなる。サティーンは「クリスチャンの歌をみんなに聞いてもらいたい」という感じだったので彼の才能に惚れたということだったのかな。

幼馴染であり、サティーンの良き理解者であり、彼女に片思いをしていながらクリスチャンとサティーンの関係を応援していて、かなり良い人。

公開期間中は協賛の三菱地所関連のお店でコラボメニュー等があり、トゥールーズが描いたムーラン・ルージュのポスターの絵のポストカードがもらえる。

ムーラン・ルージュのコラボメニュー(カシスムースのケーキ)とトゥールーズ・ロートレックが描いたムーラン・ルージュのポスターのイラストのポストカード、加賀楓さんのフィギュアスタンドキーホルダー(FSK)が映った写真。丸の内オアゾ内のM&Cカフェにて。

ムーラン・ルージュのコラボメニュー
その他気になった箇所など
  • 細かいところは色々あるが、サティーンがクリスチャンのためについた嘘を信じて嫉妬と怒りに狂うクリスチャンという経緯・過程が映画版のほうがわかりやすかったように思う。
  • 映画版では高級娼婦と言われているもののサティーンはあまり男と寝ている印象がなく、「ムーラン・ルージュのみんなを守る」と言いながらも公爵と寝ることもかなり拒否していたが、ミュージカル版は娼婦としての役目も果たしている雰囲気があった。
  • 女性であるサティーンが「わたしは誰のものにもならない」とはっきり言うところも世相を反映しているように感じた。クリスチャンを愛しているから公爵の誘いに乗らない、というよりボヘミアン魂に則り、誰かのものにならないというサティーンの主体性が重視された気がする。
  • 映画版では公爵が銃を使うが、小道具としての銃の役目がクリスチャンがサティーンと心中しようとするシーンに変更されていた。アブサン(強い酒)とか、映画版でも使われていた小道具がミュージカル版では違う形で利用されていた。
  • 公爵役のKさんはだいぶ前にアニメ「BLOOD+」でEDテーマ「Brand New Map」を歌われていた方。あの曲が結構好きだったので公演後久しぶりにYou TubeでMVを見た。Kさんの公爵はかなり映画版に見た目が寄せられていて私の中での公爵のイメージに近かった。

www.youtube.com

  • クリスチャンは20代の若い青年だが、40代の井上芳雄さんの若々しさたるや…。憎悪に染まり、いわゆる闇落ち状態の演技・歌声の迫力は素晴らしい。あと歌っているときの歌詞もセリフも非常に聞き取りやすい。歌声はきれいだけど歌詞が聞き取りにくくて何を歌っているのか分からない俳優さんもいる中で、長年帝劇で主役を担う人はやはり違う。
  • 物語は悲恋だけど最後にフレンチカンカンで大盛りあがりするので「楽しかったー!」という気分で帰れる。

 

とにもかくにも素敵なミュージカルでした。2万近いお金を出して見に行って良かった。

休憩時間(25分)でトイレを済ますのがかなり難しいこと以外はとても良い体験でした。