加賀温泉旅行

加賀温泉旅行

 

1泊2日で加賀温泉へ旅行した記録。

大好きな加賀楓さんが観光大使をしていたことでもおなじみ、加賀温泉。2024年の年始の地震前に行ってきたが、今年もぜひ行きたい場所。

数年前にも一度行っているものの金沢にも寄っていたので加賀温泉でゆっくりすることができず。今回は誕生日プレゼントとして友人についてきてもらった。

加賀楓という感情の発露はこちら

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費用(ざっくり)

・宿泊費(葉渡莉/素泊まり)   9,000円

・名古屋⇔加賀温泉(往復)  13,380円

・市内移動レンタカー(2日間) 9,900円

宿については後述。

 

【レンタカー】

山中温泉山代温泉の両方を行くにあたり、バスの時間を気にするストレスを軽減するため、レンタカーを利用。レンタカーはスマイルレンタカーさんを利用。加賀市周辺にt店舗をかまえるローカルな会社らしいが、大手他社と比較しても格安。公式ラインで予約や質問もできて対応も丁寧で非常に良かった。

今回は普段あまり車の運転をしない友人との旅だったので、軽自動車2日間に免責補償とNOC補償をフルでつけた。さらに加賀温泉駅での配車回収も入れて9,900円!

駅近くに店舗がないとのことで駅での配車・回収をお願いし、さらにカーナビ付きの禁煙車でお願いしたところカーナビは標準装備とのことで安心。お借りしたスペーシアはバックモニターも付いていた。今回は北陸新幹線開業に向けての工事で駅の駐車場が使えず、隣接するショッピングモール(アビオシティ加賀)の駐車場で受け渡しとなった。配車回収は事前にラインで時間と場所を決定し、当日もラインと電話のやり取りで待ち合わせて受け渡し。当日決済だがクレカもQRコード決済も可能。

ちなみにレンタカーを借りるときは必ず車の色と車種ナンバーが分かる状態の写真を撮影している。(自分の車でないと探すのに苦労するので…)

 

1日目/愛染寺

宿泊先を山代温泉にし、2日目を山中温泉鶴仙渓というふうにざっくり行程を決めていたので1日目は山代温泉山中温泉から少し離れた場所を訪れることにした。

最初は片山津温泉の近くにある瑠璃光山・愛染寺。

駐車場が近くにあるということでナビを入れて探していたが見当たらず、近隣を2周して片山津温泉総湯の駐車場を利用することに。

楠沢歯科の右隣に愛染寺の看板と住宅街につながる細い坂になった路地があり、ここをまっすぐ登ると愛染寺につながる階段に突き当たる。階段の斜め左に愛染寺の駐車場につながる車道があるのでここを使えば車で愛染寺のすぐ近くまで行ける。この日は階段手前の民家の前に車が駐車されていて道が塞がっており、寺につづく坂道へ行けない状態だったのでいずれにしても寺までは徒歩で行くしかなかった。

 

愛染寺は加賀楓さんが加賀温泉観光大使時代にパンフレット撮影等でも訪れていた場所。小さな山の上にあるので見晴らしがよく、どこでもドアのようなフォトスポットもある。

ドラえもんのどこでもドアのようなフォトスポット

どこでもドアの扉の先に加賀の自然や町並みの景色が広がっている

この日は小雨が降っていてあいにくの天気。傘をさしながら友人に撮影してもらった。
行った時期は紅葉シーズンは終わりがけだったが足元の落ち葉がきれいだった。晴れていたらもっと素敵な景色だったんだろうなあ…。

1日目/片山津温泉総湯・まちカフェ

駐車場を利用させていただいたので総湯も訪れた。共同浴場というか公衆浴場のようなものをこの地域では「総湯」と呼ぶそうで、現在は自治体が運営する温泉施設兼健康センターのような感じ。柴山潟という湖に面していて湖面と鴨を見ながら入浴できるらしい。今回総湯の方は利用しなかったが平日の昼間からけっこう人が入っていくのを見たので地域に愛されているのを感じた。

総湯施設内に「まちカフェ」というお店が入っていてランチやカフェメニューを提供している。

柴山潟の鴨を見ながら食べた合鴨プレートランチ

ちょうど昼時で、平日限定で1,080円のプレートランチがあったのでこちらで食べて行くことに。テラス席もあったが雨のため室内テーブルでいただいた。鴨を見ながら鴨肉を食べた。

ほかにもオシャレなドリンクやデザート系メニューも。

ちなみに、かもやんというご当地ゆるキャラもいるらしい。

 

この片山津温泉総湯の前には、いつもかえでぃーを応援してくださっている鉄板焼のお店「なか伸」さんやスタンプラリーにも参加されていた「ヒラクベーカリー」さんがある。

次に行くとき立ち寄りたい場所のひとつ。

 

1日目/那谷寺

紅葉や自然が美しいと聞いていたので那谷寺へ。場所としては加賀市の隣の小松市になる。

拝観料1,000円で敷地内の建物やきれいなお庭を巡ることができる。

那谷寺の山門

門前のお土産屋の店主によると、もとは違う名前の寺だったそうだが、「ここにお参りすれば西国三十三箇所めぐったも同然」と偉い人が褒めちぎったそうで、それがきっかけで西国三十三箇所の一番最初・那智山と一番最後・谷汲山の最初の文字をもらって「那谷寺」となったらしい。

つまりここを訪れた私たちも西国三十三箇所巡ったも同然ということである。

かなり古くてかなり広いお寺。雨だったのが残念だが、苔がきれいで紅葉や桜の時期はさらに美しいだろうなあと感じた。

苔むした灯籠

顔みたいな不思議な岩

琉美園という庭園と茶室のある場所から本堂に戻る道は岩の中のトンネルになっている

展望台のような場所があったり、庭園とお茶室があったりと西国三十三箇所めぐったも同然と言われるだけのことはある場所。今回は時間がないので寄らなかったが、那谷寺からさらに山に分け入った方には「苔の里」とかいう気になるスポットもあるらしい。

 

門前のお土産屋さんで「ごまだれ餅」を購入。個包装で量も値段も会社に持って行くのにちょうど良いのでおすすめ。ごまの風味がとても良かった。護摩行からとったダジャレなのだろうか…(調べると胡麻の国内自給率が0.1%だったので産地というわけではなさそう)。ごま豆腐とかごま系フードが土産物として推されている。

 

1日目/加賀 伝統工芸村 ゆのくにの森

加賀っぽいことはだいたいここにくれば楽しめる的な触れ込みで紹介されていたので1日目の最後はここへ。

入ってすぐに映えスポットがあるが生憎の雨

大きなお土産物屋から九谷焼加賀友禅などの石川県の伝統工芸品を見るだけでなく色んな体験が楽しめる。

入村料は550円で各種体験や村内サービスは別途料金がかかる。

営業終了時間が16:30と少し早めなので注意が必要。

時間が足りなくてすべて見きれなかったが、体験もする予定ならここで1日過ごすこともできる程度に充実した施設。九谷焼を割と安く購入できるのも魅力。

加賀友禅の型染め体験

1,500円でハンカチの型染めを体験。Tシャツやランチョンマットへの型染めも可能。

用意された中から好きなデザインを選んだら、あとは型に沿ってステンシルの要領で好きな色で染めていく。もちろん加賀楓さんのメンバーカラー・イタリアンレッドに寄せて朱赤を使用。

ブラシでぼかしを入れながら染めるのが加賀友禅風とのこと。型染めした後は色落ち防止のためにスタッフの方がアイロンをかけてくださる。

体験は沈金や陶芸のような伝統工芸以外にもハーバリウムとか今どきなものも。

敷地内が加賀の里山風になっているのでだいたいどこも映えるので晴れてる日に行きたい。

1日目/寿司処・平八

素泊まりのため、夕飯は「割烹加賀」に行こうと考えていたのだが予約で満席で入れず…。暗くなって気温も下がり雨も降っていたので宿泊先の葉渡莉近くで検索して評価の良さそうなお店ということで「平八」を選んだが、これが当たりだった。山代温泉の総湯のそばにあるお店でランチ営業もしているらしい。

私への誕生日プレゼントということで友人に奢っていただいた。

海鮮丼のセット

最高に美味しい。茶碗蒸しも美味しかった…。

私と友人との会話に過度に干渉もせず、ネタや料理のことで話していると声をかけて説明をしてくださる気さくな大将。店内の和モダンなインテリアの趣味も良かった。店内の時計や大将のマスクが寿司モチーフで揃えていてさりげないユーモアもある。

のどぐろの握り

人生で初めて食べたのどぐろの握り。軽く炙ってあって口の中でとろける美味しさ…幸せの味。

割烹加賀に行けなかったのは残念だったが平八に来れたのは本当に良かった。

 

1日目/葉渡莉

宿選びは「楓ちゃんが泊まっていたところにしたい」という私のワガママを友人に聞き入れていただき、葉渡莉になった。他にも観光大使として楓ちゃんが関わっていた宿泊施設はあったが、結果的に山代温泉の中心街で総湯・古総湯にも近いので立地としても最高だった。

葉渡莉の中にも土産物屋があったので実家への土産をここで調達。近くにコンビニがないので必要なものはここで営業時間内に買うほうが良い。

葉渡莉はお風呂が2種類あったので両方とも入浴。どうも会話の雰囲気的に葉渡莉のスタッフ?と思われる方々も入浴していらした。福利厚生の一環だろうか、羨ましい…。

前回加賀温泉に来たときも思ったのだが、一日荷物を持って歩き回った後に不慣れな場所で休むとなると、温泉に入ったとはいえ翌日に疲れが残るものなのに、加賀温泉はなぜか非常によく眠れる上に目覚めも非常に良い。

ちなみに2日目の朝は山代温泉の古総湯に行くつもりだったので友人とアラームをかけて早起きしたのだが、アラームが鳴って3秒以内に止めてそのまま起きた。

駐車場は屋根つきだし、小雨の中、外を歩くのに傘を貸し出していただき、おもてなしやサービスもとても良かった。また利用したい。

雨の降る夜に撮影した古総湯の外観

雨の夜の古総湯
2日目/古総湯・総湯

山代温泉には総湯と古総湯の2種類があり、古総湯は昔ながらの入浴方法を体験できる場所で、総湯は片山津温泉と同じように近代化された公衆浴場といった感じ。

ステンドグラスの美しさに惹かれて朝風呂は古総湯へ行くことに。

(季節によって営業時間が異なるので注意が必要)

雨の上がった朝に撮影した古総湯

雨上がりの朝の古総湯

よく調べずに営業時間より少し早くに行ってしまったので周囲のお寺を見て回るなどして時間をつぶした。また、古総湯の中は昔ながらの大衆浴場の雰囲気を残しているため、脱衣所と浴場が一緒になっている。ザラ板とロッカーで間仕切りしてあるだけで、洗い場もなく、服を脱いだらかけ湯をして入るだけ。

日が昇り始めたくらいの時間で小雨も降ったりやんだりの天気だったが、ステンドグラス越しに入る日の光が美しかった。近くの旅館に宿泊している人は浴衣でそのまま来ていたが、脱衣所がこんなに小さいと知らなかった我々は普通にコートやタイツなどめんどくさい服装で来てしまい往生した。

浴場を出て階段を上がったところに休憩場所がある。古総湯の方はとくに売店などはなく、お水をいただける程度。

古総湯で休憩した後、向かい側にある総湯へ。温玉ソフトをいただき、大好きなくるみゆべしを見つけたのでお土産に購入。総湯の方は売店や広い休憩室もあり一般的な公衆浴場という雰囲気だった。

 

2日目/魯山人寓居跡いろは草庵

雨もあがったので朝風呂を済ませて宿をチェックアウトした後は山代温泉周辺を散策。

魯山人寓居跡いろは草庵の入り口

魯山人寓居跡いろは草庵の入り口

魯山人が一時滞在していた場所で500円で見学とお茶・お菓子をいただける。

昔ながらの建物の雰囲気だけでなく、魯山人の書や彫刻、陶芸作品などを見たり、手入れされたお庭でお茶をいただけたりする。

魯山人が募集したという家事手伝いの求人広告があったので見てみたら「若くて家柄が良くて美人で…」とか書いてあってセクハラも大概にしておけと思ってしまった。

出していただいた「地の香」という干菓子がとても美味しかった。

出していただいた日本茶と干菓子の地の香のセット。お盆に乗っている。

お茶と干菓子(地の香)
2日目/はづちを茶店

今回の旅の目的の一つでもあった加賀パフェ。加賀地域の複数のカフェで提供されているが、古総湯のすぐ近くにある「はづちを茶店」でいただいた。

はづちを茶店の加賀パフェ

はづちを茶店の加賀パフェ

加賀野菜や加賀棒茶など加賀の食材を使ったパフェ。最後が加賀棒茶のゼリーになっているのでさっぱり終えられるし、お茶もセットになっているので口直しをしながら食べれるのも魅力。甘さで胸焼けすることもなく最後まで楽しめた。

店内の中央には楓ちゃんのグッズが並べられていたので撮影させていただいた。

はづちを茶店に飾られていた楓ちゃんのグッズ

はづちを茶店に飾られていた楓ちゃんグッズ あゆみんとのFSKもある

グッズを撮影していたら親切なスタッフの方に「良かったら楓ちゃんが座っていた席をどうぞ」と言っていただき、楓ちゃんと同じ場所で加賀パフェをいただいた。ちなみに店内の隅の囲炉裏のある席なのだが「楓ちゃん席」と呼ばれているらしい。

お店の方とムーラン・ルージュの話でひと盛り上がりした。

 

2日目/山代スマートパーク・加賀楓の木

今回の旅の最大の目的でもあった「加賀楓の木」。

加賀楓の木に設置されている加賀楓さん直筆プレートと加賀楓さんのFSK(フィギュアスタンドキーホルダー)の写真

加賀楓の木とかえでぃーのFSK

加賀温泉観光大使として加賀市に楓の木の植樹をするというイベントがあり、そこでかえでぃーが植えた木。

山代スマートパークはカフェ併設のワーキングスペースとおしゃれなお花屋さんの入った半官半民的な施設のようで建物周囲は芝生の公園になっている。公園内には加賀楓の木以外にも樹木が植わっているが、「加賀楓の木」には赤いリボンとプレートがあるのでわかりやすいと思う。

またここで何かイベントがあったらなあと思う。

2日目/山中温泉鶴仙渓

山代スマートパークで最大の目的を果たした後は山中温泉へ。

山代温泉から車で15分ほどだったと思う。片山津温泉山中温泉山代温泉はそれぞれ車で10~20分程度で行き来できる小回りのきく感じが良いなあと思う。

山中温泉鶴仙渓のあやとり橋

山中温泉大聖寺川という川沿いにあり、大聖寺川の渓谷・鶴仙渓とそこに架かるあやとり橋やこおろぎ橋が観光スポットになっている。

あやとり橋近くの駐車場に駐車したが台数が少ないので桜や紅葉のシーズンは山中温泉の中心街に停めるとか場所を考えたほうが良さそう。

あやとり橋はその名の通り、あやとりでつくった橋のような変わったデザインの徒歩専用の橋。デザインは凝ってるのに鶴仙渓の風景にマッチしている不思議。

鶴仙渓の遊歩道

鶴仙渓の遊歩道

紅葉の盛りは終わったものの足元に名残を感じる。秋頃までは川床もあるらしいので次回訪れる際は絶対に行きたいところ。桜の時期や新緑の季節はまた美しい景色になるんだろうなあと想像を掻き立てられる…。

鶴仙渓の苔

鶴仙渓の苔

あやとり橋からこおろぎ橋を目指して鶴仙渓の遊歩道を歩く。こおろぎ橋近くにはカフェやレストランもちらほら。

無限庵という古民家カフェっぽい建物を見つけて入ってみた。

無限庵でいただいたチーズケーキ 器はすべて山中漆器

加賀藩のえらい人が子どもの結婚式のためだけに建てたとかいう経緯からして贅沢三昧の建物。ちなみに本当に結婚式を挙げることも可能とのこと。

調度品や古い武家造りを見学することができる。門構えも立派で建物入り口に銅鑼があるのでそれを叩くとスタッフが出てくる。私たちは声がでかかったのか先に中からスタッフの方が出ていらして「良かったら鳴らしてください」と言われて無駄に銅鑼を叩いた。

無限庵の一番奥の鶴仙渓の景色を一望できる贅沢な空間が「茶房うるはし」というカフェになっていて、山中漆器を使ったカフェタイムを楽しめる。

 

無限庵を出たあとは、こおろぎ橋を渡って山中温泉の温泉街通りを楽しむ。

楓ちゃんがコロッケを食べているポスターを見てコロッケ好きの友人が絶対食べたい!と言うので「肉のいづみや」でコロッケをいただいた。

いづみやのコロッケ

食べ歩き用メニューはメンチカツとかほかにも色々あった様子。メンチカツ結構好きなんだけどこの日は売り切れでコロッケに。

店内は商店街のお肉屋さんという雰囲気で、色んな芸能人のサインが並びつつも皇族カレンダーと皇族の写真も並ぶという店構えで右側の圧を強めに感じた。

店の前にはベンチもあるので座って食べることもできる。

山中温泉大聖寺川沿いの一本道にお店が並んでいるので町並みはわかりやすい。

途中立ち寄ったお土産物屋さんで地元の方と店主に勧められて「金沢おでんのつゆ」を購入。帰って早速つくってみたが、とても優しい味で美味しい。

飲めるくらい美味しい。

2日目/山中温泉・東山ボヌール

東山ボヌールの看板

こおろぎ橋で大聖寺川を渡り、山中温泉街をまっすぐあやとり橋の方向に戻るように歩いていき、あやとり橋を超えて鶴仙渓の一番端にあるレストラン。

色んなパンフレットや冊子に載っていて雰囲気も良かったのでここで遅めの昼食。

ビーフシチューのランチ

ビーフシチューのランチをいただいた。自然の中のレストランで川のせせらぎも聞こえる。観光案内のチラシ等もあり、東山ボヌールから近い場所に九谷焼の体験ができるところがあると知り、食後はそちらへ移動。

2日目/シルクロ陶芸体験工房

1階は九谷焼のショップで2階が九谷焼の陶芸や絵付けなどの体験ができる工房になっている。

東山ボヌールで「ゆかたべさん」という人形の絵付け体験のチラシを見て飛び込みで行ってみた。30分待ちと言われたため、帰りスムーズに駅に戻るため、あやとり橋の駐車場からもう少し工房に近い駐車場へ車を移動。一方通行や狭い路地が多いのでヒヤヒヤした。

「ゆかたべさん」というのは、山中温泉で芸姑の見習いをしている16歳くらいの若い女性で、宿泊客を温泉まで案内し、入浴中の客の浴衣を預かる人のことだったらしい。こういう言い方するとまだ聞こえは良いけど風呂まで案内して入浴後に浴衣を渡すとか、芸姑の見習いと聞くと半分温泉コンパニオン的な扱いでもあったのだろうなあと憶測。

16歳の子をこの地では4×4=16から「シシ」と呼ぶこともあるそうで、ゆかたべさん人形は片面が女の子、もう片面は「獅子」になっている。「ゆかたべさん」と呼ばれた彼女たちに由来して芸事の上達や商売繁盛などの願いが込められているとか。恋愛成就も書いてあってけど若い女だからとイコールで恋愛成就持ってくるのは安直すぎでは?!と思ったけど言わなかった。

こちらの体験では3,850円で好きな色のゆかたべさん人形に顔を描いてオリジナルゆかたべさん人形絵付け体験ができる。(送料は別途発生)

ゆかたべさん人形の九谷焼絵付け体験

茶色が選んだが他にも緑や金、銀などもある。

九谷焼の伝統の色で絵付けを行うが、獅子だからとそれに囚われる必要はなく、好きに描いて良いとアドバイスをいただく。女の子の面はかえでぃーをイメージした前髪にし、顔周りを赤で囲ってみた。

1ヶ月~1ヶ月半ほど届くまでに時間がかかると言われたが当月内に焼き上がって手元に届いた。

近くにある医王寺というところの印のついた願い札も送られるので、そこに願い事を書いてゆかたべさん人形の中に入れると良いらしい。

この日は30分程度でさくっと絵付けをして、加賀温泉駅へ戻った。

 

今回はじっくり加賀温泉で過ごし、自分たちで運転して回ったのでなんとなく土地勘というか、効率の良い回り方や楽しみ方というのが把握できた部分もあるので、次回訪れる際は行程をアップデートしていきたい。

年始早々に地震もあったが加賀は大きな被害がなかったとのこと。北陸新幹線開業も間近でこれから盛り上がっていく時期なので今年もぜひ訪れたい。

前回も感じた加賀温泉の一番のネックは加賀温泉駅売店が小さいこと…隣接するアビオシティ加賀にももしかしたらお土産物があったかもしれないが、駅と観光案内所が北陸新幹線開業時にはもう少し充実すると嬉しい。

せっかく帰りに加賀のお土産をと思っても少ない中に金沢製や能登製のものも含まれているので、妥協しないお土産選びができるようになっていると嬉しい。ちなみに加賀製で「のどぐろのインスタント味噌汁」があったので最後に買って帰りました。

 

年始の地震で加賀も観光客が減っているようなので、皆さんぜひ遊びに行ってください…。

飛騨高山・古川 1泊2日旅行②

1泊2日 飛騨古川・高山旅行②

旅行の2日目の記録

1日目の記録はこちら

ebimiso-champon.hateblo.jp

旅館で朝食を済ませて送迎バスで高山駅へ。

荷物を入れたスーツケースをコインロッカーに預ける。バスセンター側のコインロッカーはやや大きめで700円だが、高山駅のコインロッカーは小さめの400円。現金決済のみ。

ICカードが鍵になるタイプのコインロッカーは見当たらず。慣れない場所で荷物がわからなくなると不安なのでコインロッカーを利用するときはいつもロッカー周辺と自分の荷物を入れたコインロッカーのナンバーを写真や動画で撮影している。

 

2日目・クーポンの引き換え

「飛騨エリアフリーきっぷ・お食事コース」を買うともらえるクーポン 1枚使用後の写真

今回は飛騨エリアフリーきっぷを使用しているのでクーポンがもらえる。

railway.jr-central.co.jp

クーポンの内容はこちらが詳しい。

www.nouhibus.co.jp

バス・タクシーのクーポンをもらうこともできるが食べ歩きクーポンで切符を購入。

引き換えは駅や観光案内所ではなく、バスセンターになるので注意。このクーポンがあると「飛騨高山でみんながよく食べてるやつ」をだいたい食べることができる。

 

2日目・陣屋朝市と宮川朝市/飛騨高山

朝早めに宿を出た目的が、午前中のみ開催している宮川朝市と陣屋朝市にいくため。

陣屋朝市は野菜や果物、漬物など食べ物がメインで店数は少なかった。道の駅のような雰囲気があり、この日は小学生たちがお買い物体験をしていた。

朝食後すぐであまりお腹がすいてなかったので買わなかったが手作りアップルパイが美味しそうだった。

陣屋朝市を出て宮川朝市へ移動。

宮川朝市では食べ物以外にもさるぼぼの飾りやアクセサリー、一位一刀彫の作品や食べ歩きできる店がたくさん並んでいる。出店だけでなく、宮川沿いの土産物屋なんかもあって賑わっている。

宮川朝市

宮川に降りて河川敷で敷物を広げてのんびり買ったものを食べている人や鴨と鯉を眺めながら買い食いをしている人も。京都の鴨川のような感じだろうか。宮川朝市はキャッシュレス決済に対応している店舗がけっこうあった。

キャッシュレス決済で買った醤油味のみたらし団子
2日目・カフェ青/飛騨高山

バスセンターで交換したクーポンが利用できる店。複数店舗が入っている蔵の中にあるので一見分かりにくい。蔵の中の土間通路を入って行って看板の出ている囲炉裏の間を靴を脱いで上がっていくとカフェがある。

小さな中庭を眺めながら座敷で一服できる。

この店舗ではクーポンを使うとアルコール以外の飲料が1杯無料になる。ただのコーヒーではもったいないのでキャラメルラテを注文。それと別で「アップルクランブル」というデザートも注文。

カフェ青のアップルクランブル

甘く煮た熱いりんごとレーズンとグラノーラに冷たいアイス、香り付けのブランデーという美味しさが約束されたデザート。

 

2日目・金乃こって牛/飛騨高山

飛騨高山といえばの飛騨牛のにぎり寿司

クーポンで引き換えできる牛寿司。「金乃こって牛」はカフェ青の近くに似た名前の姉妹店があり、最初間違えてしばらくそちらの店舗に並んでしまった。

座って食べられる場所もあるのでありがたい。

2日目・稲豊園/飛騨高山

少し前にX(旧twitter)でバズっていた猫まんじゅうが売っている。

稲豊園のねこ饅頭 猫の顔を模したお饅頭

稲豊園のねこ饅頭

事前に調べて気になっていた猫のお饅頭。あんこは苦手だが猫の種類というかお饅頭の種類が多く、チーズ餡をいただいた。

2日目・スーパーさとう/飛騨高山

正しくは、さとうファミリーストア国分寺店。

地元のスーパーなのだが改装してきれいになっている。惣菜が豊富でイートインスペースがあり、地元の土産物も売っている。土産物はここでまとめて買うとお得だったりする。旅費を安く抑えたい場合はご飯をここの惣菜で済ませるのがおすすめ。

2日目・高山陣屋/飛騨高山

現在の高山市の庁舎ができるまで実際に役場として使われていた建物。

高山陣屋

かなり広いお屋敷のような建物の中にいろんな役人の部屋や懲罰部屋などを見ることができる。庭の紅葉がきれいだった。

畳または板の間なので冬は本当に寒い。靴を脱いで見て回るので冷え性の人は冬には行かないほうが良い。とてつもなく足が冷える。前回来たときは真冬で足が死にかけたことを思い出し、アンケート用紙に足が冷えるのをなんとか助けてほしいと書いた。

建物のあらゆる場所で釘隠しにうさぎの飾りがついているのが可愛い。

 

2日目・喫茶去かつて/飛騨高山

カフェ青で使用してしまったので通常料金で利用したが、こちらもクーポン対象店舗。

とくにそのつもりはなかったけど、アニメ「氷菓」で折木奉太郎が先輩と入った店だったらしい。古民家カフェでふるカフェ系ハルさんの日常に出てきそうな店。2階の座敷席を利用。格子戸から外を眺めながらアップルパイとラテをいただいた

喫茶去かつてのアップルパイ
2日目・舩坂酒造店・深山菊/飛騨高山

深山菊で飲み比べ

クーポンを利用して飲み比べに参加。といってもクーポンで飲めるのは1杯のみ。

本来は300円でぐい呑みを買い、さらに1杯300円ずつ払って飲み比べをするそうなのだが、ぐい呑みと1杯分がクーポンによりサービスされる。ちなみにこのぐい呑みは次回以降来店の際に利用しても良いとのこと。

日本酒はあまり飲まないが甘口でフルーティーな味わいということで「純米大吟醸 杜氏 平岡誠治」という杜氏が自らの名前をつけたほどの自信作という酒を試飲。白ワインのような甘さでとても飲みやすかった。買うならこれだなあと思いつつも重たくなるので断念。

ちなみに子どもは他の店舗に行けば同じクーポンでみたらし団子がもらえるそう。

酒造店の中では外国人観光客向けに英語で日本酒ができる工程を実演を交えながら説明していたり、日本酒を使った土産物が色々並んでいたりとお酒が飲めない人も楽しめる店構えだった。

 

2日目・その他/飛騨高山

その他に訪ねた場所を一部紹介

「本舗飛騨さしこ」

刺し子の店で作品の他に、初心者向けの刺し子キットも売っている。ポシェットがおしゃれで使い勝手も良さそうだったのだがお値段が良くて断念。刺し子のきれいなコースターがたくさんあったので今度行ったときはどれか絶対買いたい。変に話しかけてこず、ゆっくり見ることができた。店の奥で作業している人の声やちょうど月初の締めの時期だったのか請求書のやり取りの声が聞こえてきてアットホームな雰囲気が良かった。

 

「COREO」「匠館」

COREOは宮川沿いの朝市と反対側にある商店街にある木工作品や木製インテリアを扱うおしゃれなお店。匠館は宮川朝市側にある木製品や家具を扱う店。おしゃれなのはCOREO、店舗が大きく品揃え豊富なのは匠館といった感じ。

楓の木を使用したフォトスタンドを匠館で購入した。

 

「櫻山八幡宮

帰りの電車まで時間があったので夕方頃に訪ねた場所。

大きな鳥居が目印。階段をけっこう登るのがちょっと辛いが、中心街から少し離れるので落ち着いていて良い雰囲気。

 

帰りはバスセンターの売店でお土産を追加購入し、クーポンで5%オフしていただいた。飛騨酪農ののむヨーグルトを飲みながら帰宅。

 

ヨガ教室で足裏や背中をヨガボールを使ってほぐすと気持ちが良いので今回ダイソーでヨガボールを買って持っていった。たしかに2日目の足や背中が楽になったし、帰宅後も使って翌日背中がつらくなかったので今後も旅行には必ずヨガボールを持って行きたい。

飛騨高山・古川 1泊2日旅行①

1泊2日 飛騨古川・高山旅行①

有給休暇が余っていたので飛騨高山に行ってきた。

いつも高山駅周辺にしか行かないので今回は古川にも足を伸ばした。こじんまりとした街の中に昔ながらの町並みと見どころが詰まっていて好きな街だと感じた。

主だった場所には半日あれば回れるコンパクトな感じが良い。

JR名古屋駅掲示されていたアンジュルム・伊勢鈴蘭ちゃんの伊勢観光のポスター

 

費用

高山⇔名古屋     12,370円/人

(飛騨エリアフリーきっぷ・お食事コース)

ホテル         16,500円/人

(1泊2食付き・ポイント利用で実際の支払いは13,050円)

 

1日目・蕪水亭OHAKO/飛騨古川

名古屋駅を出発して最初に行ったのが飛騨古川。

白壁の通りや古川祭など名前は聞くもののいつも高山駅止まりだったので初めて訪れた。

今回の古川周辺の目的は大イチョウと「蕪水亭OHAKO」のランチである。

『ふるカフェ系ハルさんの休日』で紹介された「蕪水亭OHAKO」という古民家カフェ。大正ロマン的な洋風な外観やステンドグラス、古民家らしい太くて立派な梁が見どころ。

蕪水亭OHAKOの外観

蕪水亭OHAKO

蕪水亭OHAKOの薬膳ランチ ワンプレートにサラダや雑穀ごはん、ハンバーグなど。

蕪水亭OHAKOの薬膳ランチ

ランチは薬膳プレートランチ(1,080円)。薬草を使用したドレッシングや地元野菜の素揚げにハンバーグ。ドレッシングは塩味の効いてる気がした。

古川の街には他にも薬草を扱っていてハーブティーを出してくれるお店もあった。富山にも近いし山も近いし薬や薬草関係で栄えていたのかもしれない。

確か月曜休みでインスタグラムに営業情報を載せていた気がする。

 

1日目・福禅寺跡の大イチョウと白壁土蔵/飛騨古川

古川に来たのは11月上旬だったが大イチョウはちょうど見頃。

福全寺跡の大イチョウ ちょうど見頃

福全寺跡の大イチョウ

天気もよく、舞い散るイチョウの美しいこと・・・。

通りかかる人たちが皆上を見上げて写真や動画を撮ったり、黄色の絨毯となっている落ち葉で子どもたちがはしゃいだりしていた。

 

白壁土蔵の通り。しなだれかかる柳に流れている川と泳ぐ鯉はとても画になる。

多くの人がこの画角で撮影していて、ベストショットのためにお互いに場所を譲り合ったり声をかけていた。

 

1日目・日根野美術館カフェ/飛騨古川

飛騨古川駅に置いてあったパンフレットにチーズケーキが美味しいと書いてあったので寄ってみたのが日根野美術館カフェ」

日根野美術館カフェ ご自宅の縁側で美術品と庭を眺めながらケーキとお茶をいただける

日根野美術館カフェ

穴場っぽい気もするカフェ。

かなり由緒正しそうなお家で、ご夫婦が収集されている美術品を床の間などに展示されている。他に客が誰もおらず、空いていた縁側の席を勧められ、松の木の剪定中の庭を眺めながらチーズケーキをいただいた。

おそらくこのお家の方で店主と思われる御婦人に丁寧に案内されるのだが、この店の難関は入り口にある。引き戸を開けて入った玄関にあるベルをかなりしっかりガンガンと鳴らさないと店主が出てこない。軽くチリンチリンと鳴らしただけでは案内していただけず、とは言え営業中のようだし奥から人の気配もする…と3分ほど入り口で右往左往した後、意を決してベルを再度ガンガン鳴らしたら出てきていただけた。かなり思い切って鳴らすか声をかけるかした方が良い。

おすすめと聞いていたチーズケーキを頼み、飲み物に迷っていると「チーズケーキでしたらブレンドコーヒーが一番合います!」とおすすめしていただき、コーヒーとチーズケーキのセットをいただいた。カップやお皿も美しく、チーズケーキも濃厚で美味しかった。

誰かの家にお邪魔している感は強いけど欄間の飾りとか九谷の大皿も見れて落ち着いた時間を過ごすことができた。

1日目・飛騨古川祭り会館・飛騨の匠文化館/飛騨古川

古川と言えば古川祭り、ということで、飛騨古川祭り会館と飛騨の匠文化館へ。

オトクな共通入館券が800円。

飛騨の匠文化館の方はキャッシュレス決済が可能となっていたので、先にそちらで共通券を買った方が楽かもしれない。まつり会館は現金のみだった。

祭り会館はかなりお金をかけて建造したハコモノという感じだが、山車と祭りに関する情報の展示メインなので採算が不安になった。会館周辺は公園になっていて屋外イベントは可能だけど屋内でのイベントスペースはなさそうなので、こういう会館を屋内イベント時に利用できるようにしておくと良いのではないかといらないことを考えていた…。好きな街なので存続していてほしいし、毎年飛騨市ふるさと納税をしているが支援内容を来年から文化振興系にしようかなと思いを巡らしている…。

ちなみに匠文化館や福禅寺跡の大イチョウなどがある周辺一帯がこの街の観光のメインになっていて、土産物屋などもあった。100円くらいで鮎の天ぷらとか塩焼きが食べれる。

全体的に外国人観光客が多く、宿に向かうため飛騨古川駅から高山へ向かう電車に乗ったら車内の乗客の9割が外国人観光客のようだった。匠文化館でも外国人観光客がちらほら。スタッフの方が自身の英語に加えて簡易の翻訳機も使って英語話者の観光客と会話や説明をしていた。

電車での移動メインで考えていたが、古川と高山の間は電車の本数も少ないのでバス移動前提で予定を組んでも良かったかもしれない。

 

行くまですっかり忘れていたが、映画「君の名は」の聖地となっていて、あと20年はこのネタで稼いでいこうという気概を感じることができた。ちなみに20年くらい前にはNHKの朝ドラ「さくら」の撮影地となっていて、未だに当時の撮影の様子などを紹介するパネル展をやっているので「君の名は」も同じノリで続いていくものと思われる。

 

宿:飛騨高山温泉・飛騨の里 むら山/高山

どこの宿にしようか迷っているうちに紅葉シーズンということもありどんどん部屋が埋まり、駅近くの宿がとれなくなってここに。古川で泊まることも考えたが一人で泊まれる宿の少ないこと…(二人分の宿代を払わないと泊まれない…)。

町並みがきれいなので友人と来る場合は蕪水亭や八ツ三館のような老舗か、古民家の一棟貸しもあったのでそういうところも使ってみたい。

 

実際に泊まった部屋は12.5畳の古い和室。

高山駅に到着して電話するとすぐに迎えに来てくれた。ちなみに高山駅のバスセンターのある方ではなく、裏側が待機所。翌日の朝も同じ場所まで連れてきてくれる。

11月上旬ではあるが入り口にすでに石油ストーブがあった。

大浴場があるがこじんまりとした大きさ。時間が良かったのか、ほとんど人もおらず落ち着いて入浴できた。

宿の晩ごはんとお品書き

宿の晩ごはん ボリュームがある

地元食材の料理のプラン。栗チップスが美味しかったし、川魚も好きだったので嬉しい。なまずはおそらく初めて食べたけどとても美味しかった。

食事は朝晩ともに食事会場で個室状態でゆっくりとることができた。

 

「犬王」感想

「犬王」感想

マイノリティの物語と聞いて気になっていた作品。

アマプラはこちら

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夜明け告げるルーのうた」や「きみと、波にのれたら」の湯浅政明監督。

夜明け告げるルーのうたは気になっていたがまだ見ていないし湯浅監督作品を鑑賞するのは初。

なんとなくのイメージとしては派手で奇抜な演出をする監督といった感じ。

 

声優は友魚(友有、友一)が森山未來、犬王がアヴちゃん(女王蜂)

監督情報以外を知らずに見て、犬王の平家物語のミュージカル部分での歌声の音域の広さや声の迫力に驚いて確認したところアヴちゃんだった。

森山未來演じる友魚の温かいけど芯の通った声も良かった。

 

また、脚本が野木亜紀子さんだった。あまりドラマを見ないので野木作品に触れたことはないが、社会問題を丁寧に脚本に取り入れる方という評価をしばしば見ていたので「犬王」鑑賞後に野木亜紀子さん脚本と知り、その評価の高さを思い知った。

 

表向きの物語は実在した能の名手「犬王」と琵琶法師・友有によるロックミュージカルテイストの「平家物語」と二人の盛衰。

ただ、これは明らかにマイノリティのプライドの物語だと読んだ。

 

平家の亡霊たちの声を「自分たちがいたことを知ってほしい」ということだと意味づけ、弔いを込めて舞台に取り入れ、亡霊たちは思いを昇華していく。

後の友魚の「俺たちはここにある」にも通じる観念で、マイノリティが掲げるプライドの根本的な観念でもある。

 

友魚は健常者として生まれ、後天的に視覚障害者となったが、犬王は生まれたときから障害者同然として生き、差別されてきた。同じマイノリティでありながら立場や生い立ち、周囲との関係の違いなどが、自身のあり方に対して二人が違う判断を下すことにつながったように思う。

後天的に視覚障害者となった友魚は健常者として当たり前に人として扱われていた自分が親を亡くし、盲目となったことで周囲からの扱いが大きく変わり、自身の存在意義や価値が毀損される経験を持っている。ただし、友魚には琵琶法師として育て、新しい能についても受け入れて自分自身を自由に表現することを許してくれる大人がいる。

対して犬王は生まれたときから家族にも忌み嫌われていたが、友魚との舞台によって存在も才能も認められ、初めて人として扱われることを知る。

 

強者から除け者にされてきた二人が、同じく強者に葬られた平家の亡霊たちの声に耳を傾け、舞台を通して「俺たちはここに有る」という1つのテーマを掲げる。亡霊の声を表現する中で自身の存在を主張するという筋書きが非常にマイノリティのプライドを掻き立てる。舞台で演奏やダンスをする友有座の仲間と思われる人たちにも四肢障害などのマイノリティと思われる人が多く描かれていた。当事者として見ていても、自身のあり方に悩み、仲間と共に「友有座」というありのままの自分を表現できる場所をつくり行動を起こしていく姿はプライドマーチにしか見えなかった。

 

友有座の舞台がまたしても将軍という時代の強者によって迫害を受けた後、友魚はそれでも「友有座」の名前を捨てず、「ここに有る」ことを訴え続けて処刑されるのに対し、舞台によって初めて人として扱われることを知った犬王は「友有座」の名を捨てて、時代の強者に阿る道を選ぶ。

犬王が選んだのは強者に求められる人間を演じることで「名誉健常者」として権利を得て社会に溶け込んでいくことだが、一時的且つ個人的な部分では得をするが根本的な解決にはならず、また「名誉健常者」としての条件を満たさなくなったとき、途端に手のひらを返される存在に過ぎない。それでもずっと差別されてきて、ようやくまともに扱われ、舞台に立てるようになった犬王には「名誉健常者」にさえなれば舞台を続けられるというのは縋りつきたい希望に映ったのだろうと思った。

無音の中「犬王」の存在が記録上あるものの一つも曲が残っていないという文章が表示されたとき、マジョリティに阿って生きることで犬王がなくしたものと平家の亡霊が「自分たちがいたことを知ってほしい」という叫びが思い出された。

 

演出部分では、当時の絵巻物のような平面的で陰影のすくない絵柄でありながら、3Dを要所要所で織り込んでいて迫力があり、「平家物語」という既存の作品をロックに仕上げる友有座そのもののように感じた。

失明した友魚が手で触れることで周囲の様子を認識する様を、水墨画のようなモヤが手で触れると晴れるというかたちで表現していたところも面白かった。

安徳天皇を祀る赤間神宮に行った際に、竜宮城のようなつくりが印象に残っていたが、作品内(「犬王」内の「平家物語」)で幼い安徳天皇が「波の下にも都がある」と言われて入水していったのを見て、安徳天皇が安らかに眠れるように竜宮城を模しているのか、と理解した。平家物語のアニメもあったのでそちらもチェックした上で再度、赤間神宮に行ってみたい。

犬王と友魚が出会う橋の上のシーンは牛若丸と弁慶を彷彿とさせ、二人の出会いが運命的なものだということが伝わった。

 

かなり直球でマイノリティのプライドがメタファーとなった作品を見ることができてよかった。

コロナウイルス感染の記録

コロナウイルス感染の記録

とうとう感染してしまった。一時の苦しみはすぐに忘れてしまうため、二度三度と感染することもあると聞くのでそのときのための記録。

予兆

発症日の1週間ほど前から喉に違和感を覚える。

エアコンをつけっぱなしの部屋で過ごしていたり、口を開けて寝ていたりしていたのでそのときは乾燥が原因だと考えていた。お茶や水を飲めば治っていたので気にしていなかった。

 

0日目(発症日と思われる日)

出社による勤務日。

この日の朝に若干喉の痛みを覚える。

口を開けて寝ていて乾燥したのだろうと思っていたが朝の時点で部屋の湿度は60%を超えていた。

お茶を飲めば違和感は消失。

午後からのど飴(VICKS)を舐めてもお茶を飲んでも喉の違和感が消えず、咳払いを何度もし始める。

帰宅後うがいをするが違和感が消えず、夜から熱っぽさを感じ始める。

 

1日目

就寝中に脹脛を2度攣って目が覚める。筋肉痛のような症状もあり。

起床時から喉の痛みと倦怠感を覚えて体温を測ると38度。

会社の創立記念品の体温計を使用したら15秒ほどで計測できて便利だった。

食欲はあったので朝食後にロキソニンを服用して36度~37度におさまる。

ロキソニンの消炎鎮痛作用のためか脂汗が吹き出す。

後に医師に指摘されるがロキソニンは発汗により体温を下げるだけなので対症療法にしかならない上に発汗作用で脱水になりやすく、臓器に負担もかかるとのこと。

喉の痛みも熱も変わらず6時間あけながら1日でロキソニンを3回服用して就寝。

鼻が詰まって寝付きが悪かったが夜のロキソニンが効き始めると鼻がある程度通って息がしやすくなり即就寝。

 

2日目(ラゲブリオ1日目)

前日から喉の痛みを訴え始めた母親も発熱したため2人で医療機関を受診。

一旦熱が下がっていて病院では36.5度だったがインフルエンザとコロナの検査をして2人ともコロナ陽性。

基礎疾患があるためコロナの特効薬とされるラゲブリオを処方される。

1回4カプセルを朝と夜に服用。食事が取れなくても服用可能。1カプセルがなかなか大きい…。

次の服用タイミングまで2時間以上あるため帰宅後すぐの服用を勧められる。

医師からは前述のロキソニンについての注意を受け、意地でも水分を摂り、うがいをしまくることを勧められる。

味覚や嗅覚の異常はなかったが予防のための亜鉛と解熱頓服としてカロナールも処方された。

午後には熱が上がりぼんやり頭痛を感じる。

ちなみにラゲブリオは2023年9月末までは公費負担だが自費だと10万近い薬らしいのでこのタイミングで罹患しておいて良かった…ような気がする。

就寝時は37度台。水の入ったペットボトルで脇を冷やしたり、目が覚めるたびにうがいをしたりして過ごす。

 

3日目(ラゲブリオ2日目)

変な夢を見て目が覚める。

朝から37.8度。喉の痛みはあるが食欲はある。

母が食欲不振状態だったので念のため食事量はセーブした。

ゼリー飲料や前日に買ったトルティーヤ等を食べる。

ロキソニンは服用せず、ラゲブリオと亜鉛のみで過ごし、37度台が続く。

最高体温:昼寝直後のタイミングで37.7度

目の奥が痛いような眼精疲労と肩こりからくるタイプの頭痛を感じる。

就寝前には36度台をキープできるようになり、体熱感は減る。

 

4日目(ラゲブリオ3日目)

起床時に35.8度

食後のタイミングで36度後半になったがその後は35度後半~36度前半と普段の平熱をキープ。

喉の腫れは和らいだが痛みはまだある。鼻水と咳と痰が症状のメインになる。

この日から在宅で仕事を再開。

目の奥の違和感と頭痛が抜けないためロキソニンを服用。かなり改善。

倦怠感が抜けないため、コロナ特有の倦怠感かと思ったが、ここ数日、消費エネルギーも摂取エネルギーも低くなっているせいではと考え、チーズとアミノプロテインを摂取。昼食の量も増やした結果、倦怠感は劇的に改善。

5日目(ラゲブリオ4日目)

35度~36度台で安定。在宅で業務。

頭痛も改善。鼻水と咳、喉の痛みが継続。

 

6日目(ラゲブリオ5日目)

出社勤務。鼻水と咳、喉の痛みが続き、鼻声のため耳鼻科へ。

痰切りと喉の薬、咳止め薬を2週間分処方される。

コロナのためか吸入はなかった。

症状の大半は咳になる。

 

3週間目

3週間経ったがまだ咳だけ継続

薬を飲めばある程度は咳がおさまるが夜間は咳が増える。

再度咳止め薬をもらう予定。

 

第一回目のコロナ罹患時の記録は以上。

「赤と白とロイヤルブルー」感想

「赤と白とロイヤルブルー」感想

原作も読破済でアマゾンオリジナル作品として実写化すると聞いてずっと楽しみにしていた。

アマプラはこちら

 

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0BYNNHG34/ref=atv_dp_share_cu_r

 

原作はなかなかボリュームがあるので、それを1本の映画にするにあたっては、ある程度端折られるだろうとは思っていたが、それでもきれいにまとまっていた。

原作はここ数年の中でもかなり夢中になって読んだ作品の一つ。あまりに楽しくて続きが気になりすぎて昼休憩中に食堂で必死になって読んでいた。

 

ホワイトハウス三人組が好きだったのでアレックスの姉・ジューンが登場しないのが残念だった。その分ジューンの役割はノーラが担っている感じだった。

映像で見るノーラはお人形みたいにとてもキュートでチャーミングで原作以上に好きになった。原作のノーラははしゃいだり騒いだりもするけど、もう少し知的でインテリなイメージが強かった。実写化にあたってセリフやキャラクター性を大きく変えている感じもないし、役者(レイチェル・ヒルソン)の演技と演出によるものだと思う。

 

キャラクターの良さでいうとザハラも。

ヘンリーに対する「(メディアに)撮られたら頭を胴体からブレグジットするぞ」みたいなセリフ(字幕版)とかウィットに富んだ悪口と勢いが良かった。

メールが流出した後の深刻なはずのシーンもザハラのノリとアレックスの「ヘンリーは思い詰めると眉をしかめるのがめっちゃかわいい」とかいう惚気で割りと軽く流れていった感がある。

 

ポロの試合の後にロッカールームみたいなところでセックスするシーンも原作では前段として馬にまたがってポロをプレイするヘンリーの身体に欲情するアレックスがいたけど、セックスシーンにポロをプレイしている最中の太ももや尻のぶつかり合いを印象的に挟む演出は映像ならではの演出だなあと思った。

 

別荘でアレックスがハンモックに横たわって読んでいた本がおそらく本作の原作者ケイシー・マクイストンの二作目「明日のあなたも愛してる(原題:One Last Stop)」だった。ヘンリーの読んでいた本が分からなくてググってみたらこちらもアトウッドの「誓願」と共にブッカー賞を受賞したフェミニズム本のようで来月くらいに翻訳本が出版されるらしい。

原作と違う部分はあっても原作の意図を理解して映像化しようとしていることが伝わってきた。

 

今回の実写化には出なかったラファエル・ルナの役割(メール流出とか)をミゲルが担っていた。ラファエルが犯人だったからこそショックが大きい事件だったんだけど、少し前からあくどい奴と分かっていたミゲルが犯人だったので王道というか、勧善懲悪っぽさが出てしまった気もする。

他にもヘンリーの姉のビーが妹に、女王(ヘンリーの祖母)が国王(祖父)になっていたり。ヘンリーの母と女王とのやり取りをカットする分、わかりやすく堅物っぽいキャラクターを求めて国王(高齢男性)へ変更したのかなと思った。

アレックスの母がパワーポイントで性教育するシーンは見たかった…。

 

メールの流出~大統領選を迎えるまでの流れは原作では結構深刻でアレックスもヘンリーもすごく傷ついていて、あのあたりを見るのは辛いなあと構えていたけど、結構あっさりだったので拍子抜けした。

アレックスが堂々と演説していたシーンはとても素晴らしかった。本邦では彼の言う「たまたま好きになった人が男性で…」は都合よく取られてしまうだろうなあと感じたくらいで。

流出事件についてはメディアが初期から明確にヘンリーとアレックスを擁護する立場を取っていたのと、堅物っぽいヘンリーの祖父もゴリゴリの差別意識に基づく行動というより(それもなくはないけど)、国民の差別意識を予見してヘンリーを守るという意識が先立っているように感じたので私自身もダメージが少なかった。

流出したメールを見ているなら僕たちの愛情が深いものだとわかる、というセリフは原作を読んでいる身としては彼らが実在する様々なクィア当事者たちの文章を引用しながら愛を交わしているのを知っているので説得力があるんだけど、映画だけ見た人にはちょっと説得力がたりないのではと感じた。

たぶん引用しているメール文章自体が今回の映画には出なかった。二人の教養の高さとかも感じられて好きだったので残念。

 

全体的にクィアロマンスの趣が強くて政治性やクィアの当事者表象(辛さしんどさのようなもの)はあっさりめだったなあと思う。

でもハッピーエンドのクィアロマンスを安心して楽しめたので良かった。

ハッピーレズビアンロマンス映画も期待したい。

企業におけるパートナーシップ制度とファミリーシップ制度の策定について

企業における「パートナーシップ制度」と「ファミリーシップ制度」の策定について

企業単位で策定する福利厚生的な意味合いでの「パートナーシップ制度」および「ファミリーシップ制度」を起案し、施行しました。

地方の中小企業の中で企画して規程をつくり、施行に至るまでがなかなかハードルが高く、苦労も多かったため、もし制度の立案を考えている人がいた場合に参考になればと思い、記録します。

というか苦労したので記録しておきたい。

 

《注意》

2023年8月頃の記録です。

現時点でも同性婚についての裁判が行われている最中であり、この裁判の結果(判例)やその後の法改正等により対応すべき内容が変化する可能性があります。

 

どのように制度の必要性を訴えるか

ここが一番大きな課題であった。

結論を言うと、現状の福利厚生制度に公正さが欠けていることを針小棒大に語って導入に持ち込んだ

制度設計前の状態としては、

  • そもそも男性が9割の業界であり、旧態依然な文化が業界全体を覆っているので制度を企画提案しても反発を受ける可能性があった
  • 当事者やアライ*1の従業員から要望があったわけではない(私自身が当事者であるが、カミングアウトできる雰囲気は醸成されていないし、要望して反発を食らったり差別発言を受けたりするのが怖くてクローゼット*2状態である)

仮に反発を食らっても自分を含む性的マイノリティー当事者が最小限のダメージで済むようにするにはどういった理由付けが最適か、というところがネックで進められなかった。提案をきっかけに私自身のセクシャリティに関する質問をされたり、時期尚早だと言われる可能性を考えるだけで泡吹いて死ぬと思っていた。

導入に至った背景

従業員の子どもを対象とした福利厚生について、これまで事務担当者が把握しやすいという理由で「従業員の被扶養者の子」に限定して支給していたのだが、共働き家庭や現場の女性従業員もわずかながら増えてきたことで、子どもを持つ従業員でも扶養状況によって福利厚生の対象となる人とそうでない人が発生するようになってしまった。

さすがに公正さに欠けるのではないか、という話が持ち上がったのでここに便乗し、

「福利厚生制度の目的が日々現場で頑張っている従業員とその従業員を支えてくれている家族への労いや感謝であるなら、法的な家族関係でなくとも従業員を実質的に支えてくれている人については福利厚生制度の対象とするのが筋ではないか?」という疑義を呈するかたちで導入に持ち込んだ。

そもそも弊社は旧態依然としているおかげか「従業員は家族」「従業員を支えてくれている家族に感謝」といったことを役員はよく口にする。そこを逆手に取り、「ほぼ家族と言える状況にあって実質的に従業員をサポートしている人を蔑ろにするのは普段お話される内容とズレてませんか?」というアプローチを行った。

グループも会社もレインボーパレードに協賛するとかアライを表明するとかそういうことは一切していないが、差別的態度を明確にはしていないし、親会社はハラスメント研修で多様性に関する話をしているようだったのでアプローチ次第で導入は可能だろうという考えはあった。

導入提案時に留意した点

確実に制度を導入させるため、従業員・会社・福利厚生制度の手続きを担当する事務担当者のすべてにメリットがあるものだとして訴えた。

《従業員》

  • 利用できる福利厚生制度が増える

《会 社》

  • 従業員を本質的にサポートする人への感謝を伝えられる
  • 制度を通して多様性を受け入れる文化が醸成され、ハラスメント防止につながり、当事者である従業員が安心して業務に従事でき、能力を発揮しやすくなる
  • 上記の結果、帰属意識が高まり離職防止につながる

《担当者》

  • 制度立案に伴って手続きフローを見直すことで、事務手続きの煩雑さが減る

人権はメリット・デメリットの話では決してないが、性的マイノリティー心理的安全性が担保されているとは言えない状況で当事者の人権と安全を確実に守るために必要な手段としてメリットを訴えることとした。

とくに営利企業としては、

  • 多様性を認め合うことで当事者が能力を発揮しやすくなって生産性が上がる
  • ハラスメントが減って離職率の低減に繋がる

こういうメリットを添えると断りにくいはずなので反論も少なく、提案者が心理的ダメージを受ける可能性も減る。重ねて言うが、人権はメリット・デメリットの話ではない。提案者や制度設計に関わる人の心理的安全性は確保されるべきと考えたので、私が私を守るために行った手段にすぎない。

ハラスメント研修がしっかり行われていて、心理的安全性が確保されている場合は堂々と人権を語って導入するのが良いと思う。私もそうしたかった。

制度の概要

既に法的な夫婦や親子関係にある場合は、住民票の写し等で確認できれば今後は福利厚生制度の対象とすることにし、「パートナーシップ制度」と「ファミリーシップ制度」の対象は事実婚カップ同性カップルとした。

パートナーシップ制度

婚姻関係にない異性カップルの場合は、事実婚の制度を利用できるため、住民票の写しで「未届けの妻/夫」という記載を確認できれば社内制度上の「配偶者」として扱う。

事実婚を利用できない事情がある場合は事情を確認して除外要件とかに該当しなければパートナーシップを認める。

 

同性カップルの場合は、一定の書類で関係性(生計を一にしていること)が証明できれば社内制度上の「配偶者」として扱う。

 

同性カップルの関係性の証明については、異性間での法律婚の際に提出する書類をベースに検討。

 

(1) 自治体のパートナーシップ制度等を利用している場合

近年では自治体ごとにパートナーシップやファミリーシップ等の制度があるため、既にこうした制度を利用している場合は手続きを簡略化できるようにした。調べてみると、どの自治体も申請者に法律婚と同じような書類の提出を求めていることが多いようだったので、すでに自治体によって関係性が証明されているものとし、

自治体のパートナーシップ制度等の証明=婚姻届受理証明書

と見なすことにした。

自治体のパートナーシップ制度利用時の提出書類》

  • 申請書(社内様式)
  • 自治体のパートナーシップ制度等の証明
  • 双方の本人確認書類

 

(2) 自治体のパートナーシップ制度等を利用していない場合

私の居住する自治体もそうだが、パートナーシップ制度等の整備がない自治体もある。居住地によって制度の利用ができないということは避けたい。そのため、法律婚の際に役所に提出する書類を以下のように読み替えて会社に提出することで関係性を認定することとした。

婚姻届を出す際の書類を読み替えてパートナーシップ制度に流用。婚姻届は社内の申請書、戸籍謄本は独身の証明と読み替えた。(本人確認書類はそのまま)

婚姻届を出す際の書類を読み替えてパートナーシップ制度に流用

上記の読み替えによる書類に加えて、生活実態が婚姻関係に相当すること(生計を一にしていること)を証明する書類を提出することとした。具体的に言うと、同居していること、または第三者から関係を認められていることのいずれかを要求することにした。

法律婚の場合は、同居していなくても結婚が可能なため、公正さを保つために同居していない場合も申請書に第三者の署名があれば、周囲から婚姻に相当すると認められているものとみなした。簡単に言うと婚姻届の保証人欄のような役割。

制度運用は性善説で実施したいが、制度悪用説を唱える管理職がいることを懸念し、先回りして生活実態を確認するという内容を盛り込んだ。

自治体のパートナーシップ制度の利用がない場合の提出書類》

  • 申請書(社内様式)
  • 独身であることを証明する書類(戸籍謄本や独身証明書
  • 本人確認書類
  • 生活実態が婚姻関係に相当することを証明する書類(同居の場合は双方の住民票の写し、同居でない場合は申請書の保証人欄を記入)

また、パートナーが外国籍の場合は、出身国の独身証明(婚姻要件具備証明書)とその日本語訳の提出を求めることも規程内に明記した。

ファミリーシップ制度

パートナーシップ制度を申請していることを前提とし、パートナー関係(≒婚姻関係)を認めた上で間接的にパートナーの子と従業員の親子関係を認定する。

※法的な婚姻関係にある配偶者の連れ子を養子縁組にしていない場合はこの制度とは別に①配偶者との婚姻関係と②配偶者の実子であることの2点の確認ができれば諸制度の対象とすることとしている。

事実婚同性カップルの場合、法的な婚姻関係にないため出産当事者の実子として扱われ、法的にはシングルマザー状態となる。事実婚関係で遺伝子的に自分の子だとしても同様。

パートナーシップ制度とファミリーシップ制度の関係を表した図。従業員とパートナーの関係をパートナーシップ制度で認定した上でパートナーと子の親子関係が確認できれば間接的に従業員とパートナーの子も親子関係にあると見なし、社内制度上の「家族」として扱う。

パートナーシップ制度とファミリーシップ制度の関係

《ファミリーシップ制度の申請における提出書類》

  • 申請書(社内様式)
  • パートナーとその実子の親子関係がわかる書類(母子手帳の写し等)

パートナーシップが未届けの場合はパートナーシップ申請に必要な書類もあわせて提出する。

 

この制度によって利用できるようになる各種福利厚生制度等

これまで「配偶者」としていた部分について、各規程内に「配偶者にはパートナーシップ制度に基づき申請され、受理されたパートナーを含む」のような文言を追加し対応した。

  • 結婚祝/結婚休暇、忌引

パートナーシップ申請≒結婚として結婚祝を支給

休暇の取得も可。忌引の対象にパートナーとその家族も含めた。

  • 出産祝/出産休暇

パートナーシップ申請をしているパートナーが出産し、ファミリーシップの申請をした場合は出産祝を支給

※連れ子のいる人とパートナー関係になり、連れ子をファミリーシップ申請した場合は出産したわけではないので対象外

  • 子どもに関する祝金・休暇等

子どもを対象にした制度(子の結婚休暇等)についてはファミリーシップ申請した子も対象に含めることとした。

  • 香典料・弔慰金

弊社の場合は慶弔見舞金の中に香典料を定めている。

頭の片隅で考慮しておくこととしては、同性パートナーの場合、法的な婚姻関係がないため、基本的に相続権がない。また、遺言等で相続が行われても相続税配偶者控除は適用されない。(事実婚配偶者も相続権はないが後述の死亡退職金は配偶者と同等の扱いになる)

《家族死亡により従業員に支払う場合》

香典料はあくまで喪主に対して贈与されるものであり、故人の財産ではないので相続税の課税対象とはならない。また、贈与税においては社交上必要なものとして課税対象外。所得税においても常識の範囲内の金額であれば課税対象とはならない。

そのため、支給対象となる家族を以下に変更し、下記に該当する人が亡くなった場合に会社から香典料を出すこととした。

  • 配偶者・パートナー
  • 配偶者・パートナーの親
  • 子(ファミリーシップ制度上の子を含む)

弔慰金も遺族を慰める目的で遺族に対して贈られるものなので相続税は発生しない。また、贈与税所得税においても社交上必要なものという扱いで一般的に課税対象外。

《本人死亡により家族に支払う場合》

香典料は家族死亡時と同様ではあるが、故人となる従業員の地位や功績により、高額な香典料を支払う場合は所得税贈与税の対象となる可能性があるので支払い前に顧問弁護士や社労士等に確認を行った方が良い。

弔慰金も基本的に香典料と同じ扱い。ただし、企業から遺族を慰める目的で贈られるため高額になりやすいことから非課税枠を超えた部分について相続税が課税される。

弔慰金が非課税となる限度額は以下。

  • 業務上の事故などで死亡した場合 :故人の死亡時の給与の3年分相当額
  • 業務以外の事故などで死亡した場合:故人の死亡時の給与の半年分相当額

上記の金額を超えた場合は後述の「死亡退職金」として扱われ、相続税の課税対象となる。弔慰金と別でさらに死亡退職金の支給もある場合、受取人が同性パートナーだと配偶者控除の対象外となるため相続税が高額となることが考えられる。死亡退職金や弔慰金の意義が失われることがないよう、事前に受取人(遺族)および顧問弁護士等との調整が必要となりそう。

  • 死亡退職金

賃金規程上、従業員死亡時の退職金の支払先を遺族としていたが、配偶者またはパートナーシップ制度上のパートナーを第1位とし、第2位に労働基準法に定める遺族とした。(労働基準法における「遺族」の考え方では事実婚も配偶者と同等に扱われる。)

受取人に関する法的な縛りはないので会社ごとに自由に設定が可能。

 

死亡退職金は遺族に対して贈与されるものだが、「本人の死亡」という事由により贈与される財産なので「みなし相続財産」として扱われる。本人が生前から持っていた財産をもらったわけではないが、本人がその会社で働き、死亡したことで生まれた財産なので本人の財産を相続したとみなす、ということらしい。また、一般的な相続財産と違い、遺族間での分割にはならず、受取人の固有財産となる。

預貯金や不動産等は法定相続人が民法で規定されているが死亡退職金は規定されていないので、会社が受取人の範囲を指定できるということである。

時短勤務や時間外労働の制限等を含む育児休業に関する制度はファミリーシップ申請をしている子に対しても利用可能とした。

但し、育児休業給付金等は法令に従うことになるため、パートナーの子のために育児休業を取得しても従業員は無給の休業となってしまうので説明が必要。

判例や法改正で変化することを祈る。

  • 介護休業等制度

時短勤務や時間外労働の制限等を含む介護休業に関する制度はパートナーやその家族(親きょうだい等)、ファミリーシップ申請をしている子に対して利用可能。

但し、こちらも介護休業給付金等は法令に従うことになるため、無給の休業となってしまうので従業員への説明が必要。

 

以上の福利厚生制度が利用可能となるが、基本的には配偶者や子どもが対象となる制度については柔軟に対応する。

その他

《パートナーシップ・ファミリーシップの解消》

本人orパートナーorファミリーシップ申請をした子の死亡や、本人からの申請により解消が可能

あとは提出書類が偽造だった等で要件を満たしていなかった場合とかも解消要件に入れた。

《除外要件》以下の場合はパートナーシップ申請の対象から除外

  • 独身でない人(他の人と婚姻関係にある人)
  • 他の人とパートナーシップを申請済の人(解消手続き後に新たに申請はOK)
  • 双方が直系血族または三親等内の傍系血族の関係にないこと(養子縁組によるものであって、養子縁組する前の関係が直系血族または三親等内の傍系血族でなかった場合を除く。)

3つ目に関しては、民法に規定されている婚姻できない関係(兄弟とか)でないことを確認している。但し、養子縁組をする同性カップルもいるため、その場合は養子縁組前が親族関係でないことが分かればパートナーシップの対象とするというもの。

 

また、制度を規程にまとめてから顧問弁護士のリーガルチェックも受けた上で施行した。

 

運用方法

アウティング等を避けるために申請ルートを複数確保した。

  • (オープンリーな人向け)本人→所属長→本社
  • (クローゼットな人向け)本人→本社(電話/メール/郵送)

今後:HR系サービスで本人→本社への申請を簡便にしたい

現実的な運用としては、福利厚生制度の対象にパートナーやパートナーの子も対象になったことを告知し、福利厚生制度を利用する際にあわせてパートナーシップやファミリーシップの申請手続きを行う流れ。

 

規程内には、ハラスメントやアウティング対策のために以下の内容を記載

  • 手続きをする事務担当者や関係者は申請者の性的志向を含むプライバシーを厳守すること
  • 業務の都合で他部署に申請内容等を通知する必要がある場合は必ず本人の許可を得てからにすること
  • ハラスメントの禁止

参考にしたもの

キッコーマン労使によるSOGIに関する取り組み【男女平等委員会資料】』

下記ページに掲載の「資料5:キッコーマン労使によるSOGIに関する取り組み【男女平等委員会資料】」が最も参考になった。

制度設計にあたってのステップや税法上の考え方についての記載があり非常に勉強になった。

jfu.or.jp

『足立区パートナーシップ・ファミリーシップ制度』

パートナーの対象要件や、パートナーが外国籍の場合に求める書類の種類等、細かい事務手続き部分で参考になった。

www.city.adachi.tokyo.jp

その他、税金関係は弁護士事務所のホームページやコラム等を参考にした。

法改正で変わっていく可能性もあるので今回制度設計し、規程に起こしてはいるけど申請者がいた場合、都度社労士や弁護士に確認はする予定。

 

最後に

制度設計で奮闘している期間、同性婚夫婦別姓さえ法律で認められていればこんな手間はかからないのに…と何度も何度も思った。

国の立法不作為のせいで一部の人々が差別され、そのせいで個人の生産性が低下するだけでなく、そうした立法不作為により低下した生産性を一部の地方自治体や企業が手間と時間をかけて代替制度をつくって補填しているのが現状。代替制度の作成や手続きの手間など結果として企業の生産性を落とすことにも繋がっていると国には気づいてもらいたい。この制度をつくる時間で他の仕事もできたのだ。

それでもパートナーシップ制度とファミリーシップ制度は絶対に必要だと断言できる。1人も申請しないかもしれない。私だってパートナーがいても使うかはわからない。

それでも、この制度があることでほんのちょっぴり安心する人がいるかもしれない。

この制度を定めた規程の中にアウティングやハラスメントの禁止を明記したので当事者を守ることもできる。

使われることではなく、いまの日本ではパートナーシップやファミリーシップの制度が『ある』ということに大きな意味があると思っている。

 

頑張って自分の会社にも制度をつくろうと奮闘している人にこの拙い記事が届き、少しでも役に立ちますように。

*1:性的マイノリティーではないが当事者を理解し支援する立場の人

*2:カミングアウトをしていないことまたはカミングアウトをしていない人のこと