「展覧会 岡本太郎」と「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」に行きました。

「展覧会 岡本太郎

こちらは愛知県美術館で開催していたもの。

大変な混雑だった。

会期終了が近かったことと、知名度のある作家であること、数日前に展示されていたミニサイズの太陽の塔を殴って破壊したニュースでさらに話題になっていたことが原因と考えられる。

個人的にはすごく興味を惹かれていたわけではなく、「芸術は爆発だ」と「太陽の塔」くらいしか知らなかった。芸術一筋の変わった人という認識だった。

作品は抽象的ではあるが色使いや作品の雰囲気に一貫性がある。好みの色使いというわけではなかったのでグッズは太陽の塔のスケッチのステッカー1枚のみ。

あれは割と気に入っている。

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岡本太郎自身が作品は公開されること(誰かに見られること)に意味があると捉えていたからか基本的にどれも撮影可となっていた。常にそこかしこでシャッターの音が聞こえた。

三原色に黒という色の使い方を多用していた。
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↑非常に既視感を覚えて写真に撮ったのだが、「ヒプノシスマイク」のロゴを彷彿とさせるのだと後から気づいた。ツイッターで「岡本太郎 ヒプノシスマイク」で検索したがあまり言及している人はいなかった。

 

岡本太郎は「対極主義」という考えを持っていたらしく、無機物と有機物、静と動、歯車(工業製品)と農作物、といった対照的なモチーフを共存させる作品を多く描いていた。

このあたりの作品に何か訴えかけるものや自分の中に感じるものはあるが、うまく言語化できていない。多様性というか、「迎合しない」が「否定もしない」という感覚を抱いた。これもまた対極的な感想だなと思う。海外生活も長かったようなので日本の調和を尊ぶ、ともすれば同調圧力の強い社会のあり方にたいする提言もあったのかもしれない。

疑問を抱き続けること、感じた違和感を無視しないこと、考え続けること、現状で良しとするな、というメッセージをどの作品からも感じた。

「芸術は心地よくあってはいけない」という岡本の言葉もあったが、場に馴染まない、心地よくない作品を見ることで、見た人が自らその違和感から自分が無視してきた「何か」に対して想起するきっかけを与えているのかもしれないと思った。

異質な作品をつくることで思考しろ、流されるなと訴えいているような。

 

岡本は芸術を自分の思想を伝える手段として捉えていたと感じた。伝えるためには見てもらわなければならないので、作品が公開されない状態になることに岡本が危機感を覚えていたというのも、公共物のデザインに注力していたというのも対話の手段として芸術を捉えていたことに通じるような気がする。

多くの人に芸術家であれ、意思を見せろ、挑戦し続けろ、と、とにかく訴えかけているところがまるで企業の行動指針のようでもあった。

個人の体験や感情、内発するものを表現し、そこから他者にも行動を促そうとしているところにアート思考を感じる部分もある。

 

川瀬巴水 旅と郷愁の風景」

こちらは三重県にあるパラミタミュージアムで開催されていた。

何気によく気になる展示を行っている。ちなみに3枚分の金額で4枚つづりの回数券(有効期限なし)が買えるので今回はこちらを購入。春からは棟方志功の展示もあるようでそれも見に行きたい。

 

自分自身、年賀状は毎年版画にしていることもあり、ポスターの美麗な版画を見て興味を惹かれて見に来たのだが、そもそも浮世絵の製作工程の認識が乏しく初めて知ることも多かった。f:id:ebimiso_champon:20230325214252j:image

撮影できたのは入り口の看板のみだった。

 

浮世絵の作成工程についての認識が乏しかったのだが、浮世絵というのは絵師・彫師・摺市による完全分業制で製作されているらしい。つまりチーム作品である。

浮世絵師として葛飾北斎歌川広重らが有名だが彼らは「絵師」に該当する。てっきり彼らが絵を描き、それをもとに版木を彫って…という作業をしているのだと思っていた。(全部1人でやっていたらあの作品数はまず無理なのだが…)

版元というプロデューサーがおり、絵師が浮世絵の完成図としての絵を描き、それをもとに彫師が版木を彫り、摺市が着色して紙に刷って作品ができあがる。広重や巴水らは絵師であって彫師や摺師ではないのでそのあたりの仕事はしていないらしい。

商品としての作品の出来に大きく貢献すると思われる彫師や摺師の存在感は薄く、作品の元絵を描いた人(絵師)ばかりが高く評価されるのは楽曲制作はしていないのにボーカルばかりが目立って評価されるバンドのようだなと感じた。

川瀬巴水の場合は版元となった渡邊とタッグを組んで制作を行っていて、色や表現にもこだわっていたようなので、絵師でありながらプロデューサー側でもあったと思われる。

 

川瀬巴水と版元の渡邊は浮世絵が廃れていた時代に2人で再度光を当てようと「新版画」として作品を発表し、「浮世絵」の復興に取り組んでいたらしい。ただの美人画にはせず、芸術手法の1つとして版画を定着させる目論見があったのかなと思う。実際美人画はまったくなく、基本的には巴水が旅に出て風景をスケッチをし、自宅に戻ってからスケッチを元に絵を描いて作品にしているので展覧会タイトルのように「旅と郷愁の風景」である。

巴水の作品はコントラストがはっきりしていて、色と光が印象的な作品が多いと感じた。夏の強い日差しや、しんしんと降る雪の中の景色とか、印象的なシーンをうまく切り取っている。

一枚に使われている色の数があまり多くないように感じたので、色数を絞ることで使われている色がとくに印象的に映る作品に仕上げていたのかなと素人考え。

日本画的なモチーフはありながら、構図や色使いは洋画を学んでいたらしいのでそのエッセンスも入っていたように思う。旅先での写実的なスケッチを元に絵を描いていたこともあり、浮世絵のような極端に大胆な構図は少なかった。


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購入したポストカード。

稚拙な感想だが、ただただオシャレだなあと思う、センスのある色使いで最近のアニメ的でもあると思う。雪景色の作品が美しくてポストカードを購入。夏の日差しの中、海に船を出しているところを描いたものもあったがポストカードにはなっていなかった。

部屋に飾ることを考えたら春らしい作品も買っておけばよかったと後から思った。