「アイカツ! 10th Story ~未来へのStarway~」感想

アイカツ! 10th Story ~未来へのStarway~」

 

アイカツも気づけば10周年。なんとなくで見始めて、ライブシーンのCGも当初はプリティーシリーズに遅れを取る状態だったのがどんどん進化していき、楽曲もバラエティ豊富に。

アイカツを見始めた当時、社会人だった私も時の流れに驚くばかり。たしか社会人なりたての頃だったような記憶。

劇場に向かう途中、前を歩く20歳前後の女性が藤堂ユリカちゃんの髪型でおなじみの縦ロールのツインテールにしていて、隣を歩くご友人と思しき女性と、どのブランドが好きだった、あのカードで一緒に遊んだね、あのカード交換したよね、と思い出を語っていて微笑ましかった。この映画はいちごちゃんたちに憧れて、元気をもらっていたあの頃の少女たちに向けて、これからも頑張ろうねというメッセージを込めていたのかなと思う。

なお、劇場に入り席に着くと私の周囲はアイカツおじさんばかりであった。

 

感想

グループからの卒業、引退ではないものの、いちごちゃんたちは実質的な事務所に近い「スターライト学園」を卒業する。スターライト学園は中学と高校のみで大学はなく、仕事はスターライト学園が引き続きサポートしてくれるらしい。卒業したアイドルたちはマネジメント業務だけ学園に委託するんだろうか。

さて、いちごちゃんも言うように、アイドルでなくても自分自身の未来について皆が一人ずつ考えなくてはならないときは来る。

先日、私の大好きなアイドル加賀楓さんもモーニング娘。から卒業され、次の道へ歩き始めた。

ebimiso-champon.hateblo.jp

加賀さんも自分のやりたいことを見つけて、進みたい道のために卒業を選んだ。

誰しもいつかは人生をどう歩んでいくのかを考えて、挑戦したり今と違う道を選ぶことがある。もしかしたら、スターライト学園から卒業する子の中にはアイドルという道から違う道を選んだ子もいたのかもしれない。

織姫学園長も言っていたが、進路とは自分の気持ちに正直に道を選べるか、その選択に納得できるかが重要。とはいえ、周囲の言葉や選択肢に左右されたり、心が揺らいだりしてしまうもの。

今回の映画では、私の大好きな霧矢あおいちゃんは将来進みたい道のために大学進学と留学を決めた。

自分の好きなこと、やりたいことを認識して、既にそのための行動をはじめていたあおいちゃんが、さらに踏み込んで、その道を自信を持って歩いて行くために進学・留学を選び、しっかり準備を進めていた。私の憧れる霧矢あおいちゃんそのものだった。

あおいちゃんから「話したいことがある」と言われたときに、いちごちゃんと蘭も「聞くよ、いつでもどんなことでも」という風に返していた。あおいちゃんが自分の進みたい道を迷いなく選び、チャレンジする決心ができたのは、あおいちゃん自身がこれまで努力してきた自分を信じられていること以外に、いつでもどんな話でも耳を傾けてくれて、応援してくれる、肯定してくれる仲間がいることが大きいと思う。映画を通してスターライト学園の仲間たちの信頼関係を言葉や態度の端々から感じることができた。

 

映画の中で繰り返し出てきた「想像もしない未来」という言葉。

まともに歌もダンスもできなかったあかりちゃんが、いちごちゃんとユニットを組んで全国ツアーをするなんて、人気モデルとして地位を確立しつつあった蘭が女優を目指すなんて、誰も想像していなかった。

 

「想像もしない未来があるはずだ」

想像もしない未来をつくりあげるにはチャレンジが不可欠だと思う。つまり、勇気を出して新しいことにチャレンジできるはずだ、ということでもある。「チャレンジしよう」とは言わない。それを決断するのはあくまで自分自身だから。でもきっとチャレンジできるよ、と肯定・応援する言葉だ。

 

卒業ライブでは、いちごちゃんがMCで「みんな嬉しいことも悲しいことも色々あると思う。でも私も君も”ここまでは来られた”。だから明日からも大丈夫。また頑張れる(意訳)」という話をしていた。

マイノリティがお互いを称え合い、「今日まで生き延びてきた」自分たちを誇りに思おうという文化があるが、そのマインドを感じた言葉でもあった。

アイドルのコンサートに行く予定が立ったとき、この日のために頑張ろうと奮い立たせて辛い仕事も乗り越えようとするときがある。いちごちゃんは、一人ひとりが抱える日常とそこで頑張る私たちを肯定して、さらに明日からもまた嬉しいこと以外に辛いこと悲しいこともあるかもしれない、でも今日、ここまでは来られた。今日ここまで頑張ってこられた私たちなら、きっと明日からも大丈夫、とそっと抱きしめて、そして背中を押してくれたように思う。

ソレイユが活動休止前、最後に歌った『MY STARWAY』には「がんばる約束」という歌詞が出てくる。明日からも頑張らなくてはならないけど、それは私だけではなく、いちごちゃんたちも同じ。いちごちゃんたちが頑張るよと約束してくれている。

いちごちゃんたちは自分の歩く道を決めて既に歩き出していて、その先でも「がんばる約束」をしてくれた。

この「がんばる約束」はいちごちゃんたちがいちごちゃんたち自身にしているのだと思う。誰かに向かっての「がんばれ」ではない。あくまで「がんばる」のは自分自身の決断によって行われるもの。

いつもセルフプロデュースで自分をどう表現するか、今ソレイユとしてどんなメッセージを届けたいかを主体的に考えてきた自立的で自律的なアイドルのいちごちゃんたちは、がんばる約束をしてそれを果たす姿を見せてくれている。

10年経って、あの頃既に社会人だった私にとっては、いちごちゃんたちが追いついてくれたように思うし、あの頃の少女たちとまた歩みを共にしてくれたのだとも思う。あの頃10歳だった子にとっては22歳のいちごちゃんたちはほんの少し先を歩くお姉さんなのかもしれない。

22歳のいちごちゃんたちの姿は今日ここまで来られた私たちに向けて、いま歩いているこの道の先なら大丈夫だと、いま頑張っている私たちを肯定し、その先へ進もうと言ってくれたような気がする。

卒業ライブを終えた後のいちごちゃんたちがそれぞれの道で悩みながらも「MY STARWAY」を聞いてお互いに「がんばる約束」をしたことを思いながら、自らを奮い立たせて毎日に挑んでいるのが伝わった。頑張って日々を過ごすのは私たちだけじゃない。一人ひとり人生があって精一杯生きている。この道はまだ続いていくし、大変なこともあるかもしれないけど、一緒に頑張ってくれるいちごちゃんたちがいれば、きっと大丈夫。

映画の終わり、そんな気持ちで明日からまた頑張ろう、と思えた。

いちごちゃんが「また会いに行きたいと思えるアイドルになりたい」と言っていたけど、たぶんそうなるための「はじまりの日々はもう迎えられている」と思うよ。と伝えたい。

 

以下、シーンごとの感想など

いちごちゃんたちが皆と集まっても仕事の話が出ないのはお互いが頑張っていることはもう分かっているからなのかな。「MY STARWAY」でがんばる約束をしているし、いつでもどんなことでも聞いてくれる仲間だから、どうしても悩んで相談したいときには話してくれると分かっているからあえて仕事の話題を出す必要がない。

鍋を囲みながらの会話で同じスターライト学園で共にアイカツをしてきた仲間の信頼関係を感じたシーンでもあった。

 

お酒を飲むいちごちゃんたちを見れる日が来ると思っていなかったけど、大人になるということを象徴するシーンでもあったし、10代だったいちごちゃんたちも成長していく、時間は止まらないことを感じさせてくれた。

とくに、セルフプロデュースを重んじるスターライト学園で、いちごちゃんたちは常に自分たちでアイデアを出し、大人にアドバイスを貰ったり、協力してもらったりしながら活動をしてきた。22歳のいちごちゃんは、ライブステージの構成を提案され、判断・決断をする側であり、スタッフの中にアイドル・星宮いちごに憧れてきた人がいることを認識していて、意識的にスタッフと距離を縮めて円滑に仕事が進めるようなコミュニケーションに努めていた。

お酒という分かりやすい部分だけでなく、仕事をする姿にも大人になっているところを感じて、これは今20歳くらいの当時少女だった子たちが更に10年後見返しても気づきの多い作品になるのではないかと思う。

 

正直、みんなで卒業コンサートやります!感動!という締め方もできたと思う。それこそ大スター宮いちごまつりのようにこれからもアイカツが続く予感を残しながら大団円での感動のフィナーレをやることもできたけど、この映画はそれをしなかった。

卒業しても、いちごちゃんたちも、あの頃いちごちゃんたちに憧れた少女たちも、人生は長く続いていくことを見せてくれたことで、「MY STARWAY」が地に足の着いた応援歌となって説得力を持ったと思う。

 

TVアニメ版で出ていたいちごちゃんの古参ヲタの男の子やユリカ様ファンの女の子がいたり、みやびちゃんやここねちゃんたちもいたしアイカツを楽しんでいた人ほど楽しめる内容になっていたのが良かった。

 

あおいちゃんは髪を切っても素敵だろうなと常々思っていたがまさか公式で見れるとは…。とても大人っぽくて素敵だった。

 

楽曲面では某作曲家の逮捕があったので、もしかしたら当初の予定から大幅な変更などあったのかもしれない。個人的にはMONACAも好きだがone trapの曲も好きだったのでそちらの曲も期待していたのだがMONACAのみだった様子。

アイカツは10周年。私の好きなアイカツスターズも10周年を迎えるときには映画をやってくれるのだろうか…。